自治体の広報は、広報紙や公式サイトだけで完結しにくくなっています。制度の案内、防災、観光、移住定住、子育て支援、企業誘致、採用広報など、伝えるべき情報は増え続けています。一方で、住民や地域外の人が情報に触れる場所は、検索、SNS、動画プラットフォームへ分散しています。
その中でYouTubeは、単なる動画置き場ではなく、自治体の情報を長く蓄積できる「公共情報の資産」として活用できます。短期的な話題づくりだけでなく、住民に伝わる広報、地域の魅力発信、関係人口づくり、庁内ノウハウの蓄積まで含めて設計することが重要です。
この記事では、自治体がYouTubeを広報DXに活用する際に、最初に決めるべきこと、運用方法の選び方、企画の作り方、効果測定、体制づくりまでを実務視点で整理します。
自治体がYouTubeを活用する目的
自治体のYouTube活用は「動画を作ること」自体が目的ではありません。まずは、どの政策課題や広報課題に効かせたいのかを明確にする必要があります。
代表的な目的は次の通りです。
| 目的 | YouTubeでできること |
|---|---|
| 住民広報 | 制度、手続き、子育て、防災、健康、イベント情報を分かりやすく伝える |
| 観光PR | 観光地、食、文化、体験、宿泊、季節イベントを映像で伝える |
| 移住定住 | 暮らし、教育、仕事、住まい、地域コミュニティの実感を伝える |
| 関係人口づくり | 地域外の人が継続的に関わるきっかけをつくる |
| 企業誘致 | 産業、交通、用地、人材、支援制度などを分かりやすく見せる |
| 採用広報 | 自治体職員の仕事、働き方、やりがいを具体的に伝える |
| 庁内研修 | 職員向け研修や説明会を動画化し、知識を蓄積する |
同じYouTubeでも、住民向けの制度案内と観光PRでは、企画も出演者も見せ方も変わります。最初に「誰に、何を届け、どんな行動につなげたいのか」を決めることが、広報DXの出発点です。
YouTube活用の3つの進め方
自治体のYouTube活用は、大きく分けると次の3つです。
- 自治体公式チャンネルを育てる
- クリエイターやYouTuberと連携する
- 目的別の映像コンテンツを制作する
それぞれ役割が違うため、目的に応じて組み合わせるのが現実的です。
公式チャンネル運営は「長く残る情報資産」に向く
自治体公式YouTubeチャンネルは、継続的な情報発信に向いています。住民向けの制度案内、首長メッセージ、イベント告知、議会・説明会のアーカイブ、防災情報、採用広報など、自治体自身が責任を持って発信すべき情報を蓄積できます。
ただし、公式チャンネルは「作れば見られる」ものではありません。テーマが庁内都合でばらばらになったり、投稿が不定期になったり、タイトルやサムネイルが分かりにくかったりすると、せっかく作った動画が住民に届きません。
公式チャンネルは、次のように「設計」「制作」「公開」「分析」「改善」を継続的に回す運用サイクルとして設計すると、単発の動画ではなく長く残る情報資産になっていきます。
公式チャンネルを運用する場合は、最低限次の設計が必要です。
- 誰に向けたチャンネルなのか
- どのテーマを継続的に扱うのか
- 月に何本、どの担当課が投稿するのか
- タイトル、サムネイル、概要欄のルール
- コメント欄や問い合わせ導線の扱い
- 公開後にどの数字を見て改善するのか
公式チャンネルの継続運用を外部パートナーと進めたい場合は、YouTubeチャンネル運営代行のように、企画・制作・投稿・分析を一体で設計する方法もあります。
クリエイター連携は「外部に届く入口」をつくる
自治体公式チャンネルは信頼性がありますが、もともと地域に関心がない人へ届ける力は限られます。観光、移住、ふるさと納税、地域産品、イベント、企業誘致など、地域外の人に知ってもらう必要があるテーマでは、クリエイターやYouTuberとの連携が有効です。
クリエイター連携の強みは、すでに関心を持つ視聴者層へ、第三者の言葉で地域の魅力を伝えられることです。自治体が「ぜひ来てください」と言うよりも、旅、グルメ、車、アウトドア、ガジェット、教育、暮らしなどの文脈を持つクリエイターが体験して語ることで、視聴者にとって自然な情報になります。
一方で、単に登録者数の多い人を呼べばよいわけではありません。自治体案件では、次の視点が重要です。
- 地域の目的とクリエイターの視聴者層が合っているか
- 行政情報として誤解を招かない表現になっているか
- PR表記、肖像、撮影許可、二次利用の条件が整理されているか
- 動画公開後に公式サイトや問い合わせへつながる導線があるか
- 単発で終わらず、次の発信に活かせる素材や知見が残るか
FunMakeでは、公共情報戦略パートナー(地方創生)として、自治体の政策課題に合わせたクリエイター活用、動画制作、情報発信の仕組みづくりを支援しています。
映像制作は「説明しにくい価値」を伝える
自治体の事業には、文章だけでは伝わりにくいものが多くあります。地域の空気感、職員の仕事、施設の使い方、防災時の行動、観光ルート、産業団地の立地、学校や子育て環境などは、映像にすることで理解しやすくなります。
映像制作が向いているテーマは、たとえば次のようなものです。
- 観光・シティプロモーション動画
- 移住定住の暮らし紹介
- 企業誘致・産業プロモーション
- ふるさと納税や地域産品の紹介
- 子育て支援、健康、防災などの制度説明
- 職員採用、仕事紹介、研修動画
- イベントやセミナーの記録・アーカイブ
ここで重要なのは、一本の動画を作って終わりにしないことです。本編、短尺ダイジェスト、SNS投稿用の縦型動画、公式サイト掲載用の素材、説明会用の映像など、最初から再利用を前提に設計すると、同じ撮影予算でも活用範囲が広がります。
映像制作の詳しい支援領域は、映像制作・動画制作をご覧ください。
広報DXとして進めるなら「運用の仕組み」が必要
自治体のYouTube活用でよく起きる課題は、動画そのものよりも運用体制にあります。
- 担当課ごとに動画の品質やルールがばらつく
- 担当者の異動でノウハウが引き継がれない
- 公開前の確認フローが重く、スピードが出ない
- 動画の保管場所や権利関係が整理されていない
- 投稿後の分析がされず、次の改善につながらない
広報DXとしてYouTubeを活用するなら、属人的な頑張りではなく、庁内で使える「型」をつくることが必要です。
たとえば、以下のような運用ルールを整備します。
| 項目 | 整備すべきこと |
|---|---|
| 企画 | 誰向けの動画か、目的とCTAを記入する企画シート |
| 制作 | 撮影許可、出演同意、字幕、画像・音源利用のチェック |
| 投稿 | タイトル、サムネイル、概要欄、リンク、チャプターのルール |
| 管理 | 素材データ、公開動画、二次利用範囲の管理 |
| 分析 | 月次で確認する指標と改善会議の運用 |
| 引き継ぎ | 担当者が変わっても続くマニュアルと投稿カレンダー |
FunMakeのYouTubeチャンネル運営代行では、動画制作だけでなく、チャンネル設計、投稿計画、分析、改善提案まで含めて伴走できます。
自治体YouTubeの企画例
自治体のYouTube企画は、目的別に型を持っておくと継続しやすくなります。
住民広報
- 3分で分かる制度解説
- 子育て支援の使い方
- 防災用品・避難所の確認
- 施設の予約方法や利用案内
- よくある質問への回答動画
住民広報では、エンタメ性よりも分かりやすさが重要です。専門用語を避け、字幕や図解を使い、公式サイトの該当ページへ必ず誘導します。
観光・地域PR
- 季節ごとの観光モデルコース
- 地元の飲食店・産品紹介
- 体験コンテンツの密着
- 祭り・イベントのダイジェスト
- クリエイターによる地域体験動画
観光PRでは、自治体が伝えたい情報だけでなく、視聴者が「行ってみたい」と感じる体験設計が必要です。地域の人、音、景色、移動のしやすさまで含めて見せると、行動につながりやすくなります。
移住定住・関係人口
- 移住者インタビュー
- 地域で働く人の紹介
- 学校・子育て環境の紹介
- 空き家活用や起業支援の紹介
- 地域コミュニティの活動紹介
移住定住では、きれいな景色だけではなく、暮らしの実感が重要です。良い面だけでなく、生活のリアルや支援制度を分かりやすく伝えることで、検討者の不安を減らせます。
採用・人材育成
- 若手職員の1日
- 部署ごとの仕事紹介
- 首長・幹部職員メッセージ
- 職員研修のアーカイブ
- 生成AIやSNS活用などの庁内研修動画
採用広報では、職員の人柄や仕事の意義が伝わることが大切です。研修動画は、担当者が変わってもノウハウを庁内に残せるため、広報DXだけでなく人材育成にもつながります。
KPIは再生数だけで見ない
YouTubeの成果を再生数だけで判断すると、自治体広報の本来の目的から外れやすくなります。もちろん再生数は重要ですが、住民向けの制度動画や採用動画は、必ずしも何十万回も再生される必要はありません。
自治体YouTubeでは、目的に応じてKPIを分けて考えます。
| 目的 | 見るべき指標 |
|---|---|
| 住民広報 | 視聴維持率、公式サイトへの遷移、問い合わせ削減、説明会参加 |
| 観光PR | 再生数、検索流入、SNS共有、観光ページへの遷移 |
| 移住定住 | 資料請求、相談予約、移住イベント参加、問い合わせ |
| 企業誘致 | 企業向けページ閲覧、商談、資料請求、視聴企業の属性 |
| 採用広報 | 採用ページ遷移、説明会申込、応募者アンケート |
| 庁内研修 | 視聴完了率、研修後アンケート、業務改善への活用 |
「再生されたか」だけでなく、「必要な人に届いたか」「次の行動につながったか」「次回改善の材料が得られたか」を見ることが重要です。
よくある失敗パターン
目的が曖昧なまま動画を作る
「YouTubeをやった方がいい」という理由だけで始めると、動画のテーマが広がりすぎて継続できません。住民広報なのか、観光PRなのか、採用なのか。まず目的を一つに絞り、そこから企画を作る必要があります。
公式チャンネルに全部載せて終わる
公式チャンネルは重要ですが、公開しただけでは見てもらえません。公式サイト、広報紙、SNS、LINE、メールマガジン、イベント、クリエイター投稿など、視聴導線をセットで設計する必要があります。
庁内確認が重すぎて鮮度が落ちる
行政情報として正確性は必要ですが、確認に時間がかかりすぎると、イベント告知や旬の観光情報は機会を逃します。定型企画は確認項目をあらかじめ決め、公開までのフローを短くすることが重要です。
担当者の異動で止まる
自治体広報では、担当者の異動が避けられません。投稿カレンダー、タイトル・サムネイルルール、素材管理、月次レポートの型を残しておくことで、担当者が変わっても継続しやすくなります。
動画の権利や二次利用が整理されていない
撮影した素材をSNS広告、公式サイト、イベント、庁内資料などで再利用したい場合、出演者、撮影場所、音源、写真、クリエイター契約などの条件確認が必要です。後から使おうとして使えない、ということがないように、企画段階で整理しておきます。
FunMakeが支援できること
FunMakeは、YouTuberマネジメント、企業のYouTube活用、映像制作、自治体連携を横断して支援しています。大阪府、熊取町、鎌倉市、延岡市などの自治体連携実績をもとに、動画を作るだけではなく、政策課題や広報課題に合わせた情報発信の仕組みづくりから伴走します。
支援できる領域は次の通りです。
- 自治体YouTubeチャンネルの戦略設計
- 投稿計画、企画、撮影、編集、投稿、分析
- 観光PR、移住定住、企業誘致、採用広報の動画制作
- 地域に合うクリエイターのキャスティング
- 住民向けSNS講座、YouTuber養成講座
- 職員向け研修動画、広報DX研修
- 生成AIを活用した多言語・観光・広報施策
- 公開後のレポート、改善提案、運用マニュアル作成
自治体向けの取り組みは、公共情報戦略パートナー(地方創生)で詳しく紹介しています。企業・自治体を問わず、YouTubeの活用方法を比較したい場合は、企業のYouTube活用ガイドもあわせてご覧ください。
まとめ
自治体のYouTube活用は、単発の動画制作ではなく、広報DXの一部として設計することで効果が高まります。
- まず、住民広報、観光PR、移住定住、企業誘致、採用など、目的を明確にする
- 公式チャンネル運営、クリエイター連携、映像制作を目的に応じて使い分ける
- 庁内確認、素材管理、投稿ルール、分析レポートまで含めて運用の仕組みをつくる
- 成果は再生数だけでなく、公式サイト遷移、問い合わせ、イベント参加、資料請求などで見る
- 担当者の異動があっても続くように、マニュアルと投稿計画を残す
「動画を作る」だけで終わらせず、自治体の情報を必要な人に届け続ける仕組みをつくること。それが、YouTubeを使った広報DXの本質です。
自治体のYouTube活用をご相談ください
FunMakeでは、自治体の広報DX、YouTubeチャンネル運用、観光PR、関係人口づくり、クリエイター連携、研修動画制作まで、目的に合わせて支援しています。
「まずは公式チャンネルを見直したい」「観光PRでクリエイターを起用したい」「庁内で動画活用の仕組みを作りたい」といった段階からご相談いただけます。お問い合わせよりお気軽にご相談ください。
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