弊社が広報戦略アドバイザーとして関わる関西の自治体公式YouTubeチャンネルが、先日、チャンネル登録者1,000人に到達しました。収益化(広告)を実際に申請するかは自治体の判断ですが、「公式チャンネルが住民・関係人口に継続的に届いている」というひとつのマイルストーンではあると思います。
この節目を機に、企業・自治体の担当者や、これからYouTubeを始めるクリエイターから繰り返しいただく素朴な質問——「収益化をオフにしているのに広告が出るのはなぜ?」「YouTubeパートナープログラムの条件は結局いくつ?」「500人で参加できるってどういうこと?」——を、YouTube・Googleの一次情報からだけ整理してお答えします。
1. そもそも「動画に広告が出る仕組み」はどうなっているのか
ここが一番誤解されやすいポイントです。結論から言うと、自分のチャンネルが収益化されていなくても、YouTubeはあなたの動画に広告を出すことがあります。
これは2020年11月18日のYouTube公式ブログ "Updates to YouTube's Terms of Service" で明示された方針です。米国では2020年11月、米国外(日本を含む)では2021年6月1日に施行された規約改定により、以下が公式にアナウンスされました(YouTube公式ブログより原文を引用)。
つまり構造はこうです。
- 動画に広告を表示する権利は、YouTubeの利用規約上、あなたが動画をアップロードした時点でYouTubeに付与されている(YouTube利用規約「Right to Monetize」セクション)。
- ただし、その広告の収益を受け取る権利は、別途YouTubeパートナープログラム(YPP)に承認されたチャンネルにしか発生しない。
- YPPに参加していないチャンネルの動画で発生した広告収益は、すべてYouTube(Google)側の収益となる。
YouTubeの利用規約原文でも、同様に書かれています:
"You grant to YouTube the right to monetize your Content on the Service (and such monetization may include displaying ads on or within Content or charging users a fee for access). This Agreement does not entitle you to any payments."(YouTube Terms of Service)
「広告を出すこと自体」と「広告の収益を受け取ること」は別の話、と覚えてください。
補足:BGMや映像素材は「Content ID」で他者の収益になることがある
実務上、もうひとつ重要なのが Content ID です。Content IDはYouTubeが提供する権利管理システムで、著作権者(レコード会社・映像会社など)が登録した楽曲・映像とアップロードされた動画を自動照合し、一致した場合に著作権者の指定したポリシー(収益化/追跡/ブロックのいずれか)を適用します(YouTubeヘルプ「Content ID の仕組み」)。
ポイントは、あなたのチャンネルがYPP参加・収益化されていなくても、Content IDで「収益化」ポリシーが選択された素材が動画内に含まれていれば、その動画には広告が表示され、収益は著作権者側に支払われる、という点です。
自治体・企業のPR動画で「市販の楽曲をBGMにした」「ライセンス関係の不明確な素材を使った」場合、自チャンネルは1円も受け取れないのに、その動画から広告経由で別の権利者にロイヤリティが流れる、ということが起こり得ます。法務・コンプライアンス観点からも、商用利用ライセンスが明確な素材(ロイヤリティフリー音源、自社撮影素材など)を使うのが安全です。
2. 自分のチャンネルで広告収益を受け取るには:YouTubeパートナープログラム(YPP)
自分のチャンネルから出る広告収益をクリエイター(あるいは運営する企業・自治体)が受け取るためには、YouTubeパートナープログラム(YPP)に参加し、承認される必要があります。
YPPの全条件はYouTubeヘルプの "YouTubeパートナープログラムの参加条件" に明記されています。前提として、以下のすべてを満たす必要があります。
- YouTube チャンネル収益化ポリシーに準拠していること
- YPPが提供されている国・地域に居住していること(日本は対象)
- 有効なコミュニティガイドライン違反警告がないこと
- Googleアカウントで2段階認証を有効化していること
- YouTube上級者向け機能の利用資格があること
- 有効なYouTube向けAdSenseアカウントをリンクしていること
そのうえで、規模に関する条件が2段階に分かれています。
3. YPPの参加条件は「標準」と「早期アクセス」の2段階
ここが2023年以降アップデートされた部分で、誤解の多いところです。一次ソースは2つあります。
標準YPP(広告収益を含む全機能が解放される)
YouTubeヘルプ "YouTubeパートナープログラムの参加条件" より、以下のいずれかを満たすこと(先述の前提条件に加えて)。
- 条件A:チャンネル登録者数が 1,000人以上で、直近12か月間の有効な公開動画の総再生時間が 4,000時間以上
- 条件B:チャンネル登録者数が 1,000人以上で、直近90日間の有効な公開ショート動画の視聴回数が 1,000万回以上
これが、いわゆる「YouTubeの収益化=1,000人+4,000時間」と長く言われてきた基準です。
早期アクセス(広告収益はまだだが、ファンからの直接支援は受けられる)
2023年に追加された新しい入口です。YouTubeヘルプ "拡大版YouTubeパートナープログラムの概要" より、以下のいずれかを満たすこと。
- 条件A:チャンネル登録者数 500人以上 / 直近90日間に有効な公開動画を 3本以上 アップロード / 直近12か月間の総再生時間 3,000時間以上
- 条件B:チャンネル登録者数 500人以上 / 直近90日間に有効な公開動画を 3本以上 アップロード / 直近90日間の有効な公開ショート動画の視聴回数 300万回以上
日本も対象国です。
標準と早期アクセスで「受けられる機能」が違う
これは混同されやすいので分けて覚えてください。
| 機能 | 早期アクセス(500人〜) | 標準YPP(1,000人〜) |
|---|---|---|
| チャンネルメンバーシップ | ◯ | ◯ |
| Super Chat / Super Stickers | ◯ | ◯ |
| Super Thanks | ◯ | ◯ |
| ジュエル / ギフト | ◯ | ◯ |
| ショッピング機能 | ◯ | ◯ |
| 広告収益(AdSense) | × | ◯ |
| ショート動画の収益分配 | × | ◯ |
つまり、500人で参加できるのは「ファンからの直接支援」の機能群、1,000人で参加できるのが「広告から分配を受ける」機能、というのが現在の建て付けです。「広告で稼ぐ」が念頭にある方は、引き続き1,000人+4,000時間(または1,000万Shorts再生)を目標にすることになります。
4. よくある疑問のQ&A
ここまでをふまえて、定番の質問にお答えします。すべて公式情報がベースです。
Q1. 「収益化をオフ」にしているのに、自分の動画に広告が出るのはなぜ?
YouTubeはYPPに参加していないチャンネル(つまり、あなたが「収益化を有効にできていない/していない」状態)の動画にも、ブランドセーフ性を満たす場合に広告を表示することがあります(YouTube公式ブログ 2020/11/18)。
その広告の収益は YouTube(Google)が受け取り、あなたには分配されません。「自分が収益化をオフにしている=広告が出ない」ではない、ということです。
Q2. マネタイズしていないチャンネル/動画に出ている広告は、誰のもの?
原則はYouTube(Google)の収益です。広告主は通常通りYouTubeに広告費を払い、YouTubeがYPP参加チャンネルにはレベニューシェアし、非YPPチャンネルからの広告については分配しない、というのが規約上の建て付けです。
ただし例外として、動画内のBGM・映像素材がContent IDで他者に登録されており、その権利者が「収益化」ポリシーを選んでいる場合は、その動画の広告収益は著作権者に支払われます(前述のContent ID補足参照)。「自分は収益化していないからゼロサム」ではなく、自分ではなく他者がもらっていることがある、と覚えてください。
Q3. 自分の動画に広告を「出さないようにする」ことはできる?
利用規約上、YouTubeは動画に広告を表示する権利をすでに持っているため、ユーザー側で「広告を一切出さない」を強制することはできません(YouTube Terms of Service 6. Permissions and Restrictions, Right to Monetize 参照)。
YPPに参加しているクリエイターであれば、YouTube Studio内で動画単位・チャンネル単位での広告の種類・表示位置・収益化のオン/オフを設定できますが、それでも上記の規約の枠内での話です。
Q4. 結局、「収益化できるチャンネル」になるための条件をひと言で言うと?
「1,000人+4,000時間(または1,000万Shorts再生)」が、広告収益を含む全機能が解放される標準の入口。**500人+3本/90日+3,000時間(または300万Shorts再生)**が、ファンからの直接支援機能だけ先に解放される早期アクセスの入口。どちらもYouTube側の審査を経て承認されることが必要です(通常1か月ほど)。
Q5. 一度YPPに承認されたら、ずっと有効?
YouTubeヘルプには、6か月以上チャンネルの活動がなく、アップロードや投稿が行われていない場合、YouTubeは収益化を停止する権利を有する と明記されています(同上ヘルプ)。「取ったら終わり」ではなく、継続的な発信が前提です。
5. 番外編:数字を達成しても「落とし穴」がある
「1,000人」「4,000時間」というしきい値の数字を達成すれば自動的に収益化される、と思っている方が多いのですが、実際にはここから先に4つのハードルがあります。実務担当者がよく躓くポイントを整理します。
5-1. 「4,000時間」にカウントされない視聴がある
「4,000時間」と一括りに言われますが、YouTubeヘルプ「YouTubeパートナープログラムの参加条件」の定義では "有効な公開動画の総再生時間" です。有効かつ公開で、しかも直近12か月間のものでなければなりません。具体的に、次の視聴はカウントされません。
- ショートフィードから再生されたショート動画の視聴時間(Shortsは別途「1,000万回/90日」または「300万回/90日(早期アクセス)」の条件側にカウントされる)
- 非公開・限定公開・削除済み動画の再生時間(「公開」要件を満たさないため)
- 12か月より前の再生時間(12か月のローリングウィンドウなので、古い再生は順次カウントから外れていく)
特に3点目は見落とされがちで、「数年前にバズった動画があるから当然カウントされている」と思っていたら、12か月前を超えた分は順次落ちている、ということが起こります。4,000時間は『過去の遺産』ではなく『直近12か月の継続発信』で積み上げる、と覚えてください。
5-2. 数字を満たしても「質的審査」がある
数字をクリアした後、YouTubeによる有人+AIの審査を経て、承認されます。ここで弾かれるのが、YouTubeチャンネル収益化ポリシーが定める2つの「質的不適格」です。
具体例として、他者動画の切り抜き連結、フリー素材だけを繋いだ動画、説明・解説が最小限の画像スライドショー(AI生成音声のみで動きが少ない動画も該当しやすい)、テレビ番組の二次利用(実質的な編集が乏しいもの)などは、たとえ1,000人を超えていても審査で落ちます。これは違反動画が複数あるとチャンネル全体の収益化が無効になる ことがある、とポリシーに明記されています。
リスクを下げるには、「視聴者が元のコンテンツとの『有意義な違い』を見て取れる」ことを意図的に設計する——リアクションなら自分のコメント・解説を、編集なら自分のストーリーや視点を、必ず付加することです。
5-3. 承認後の手続き:税務情報とPIN住所確認
「審査も通った、さあ収益化開始」——ここから先にも実は2つの手続きがあります。組織アカウントで運用している自治体・企業ほど詰まりやすい部分です。
- 米国税務情報の提出(必須):YouTubeヘルプ「米国税務情報を Google に提出する」 によれば、「居住地を問わず、YouTube で収益化を行っている世界中のすべてのクリエイターに、税務情報をご提出いただく必要があります」。米国外の個人はフォームW-8BEN、事業体はW-8BEN-Eを提出します。未提出の場合「クリエイターの全世界における収益合計の最大24%が、Googleにより控除される」と明記されています。日米租税条約により軽減税率が適用される場合があります。
- AdSenseアカウントの「種類」は後から変更できない:AdSenseヘルプに「ビジネス用アカウントまたは個人用アカウントとして AdSense アカウントを有効にした後に、アカウントの種類を変更することはできません」と明記されています。組織で運用するなら必ず**「ビジネス(組織)」**を選び、組織名義の銀行口座と一致させること。担当者の個人アカウントで紐づけてしまうと、後から銀行口座名義の不一致で支払いが止まり、**作り直し(旧アカウント停止+新規開設)**しか手段がなくなります。承認前の段階で必ず確認すべきポイントです。
- AdSenseのPIN住所確認は¥1,000で発送、支払いは¥8,000で実行(しきい値は2段階):Google AdSenseの認証基準額表を見ると、住所確認の「認証基準額」と「お支払い基準額」は別の数字です。日本円の場合、収益が¥1,000(米ドル相当$10)に達した時点でPIN(個人識別番号)が物理住所に郵送され、AdSenseアカウントで入力するまで支払いが保留されます。配送はAdSenseヘルプによると「通常3週間ほど」。一方、実際の支払い(振込)は収益が¥8,000相当(米ドル$100) に達した翌月21〜26日に行われます。「8,000円まで何もない」のではなく、1,000円の段階で郵便物が届くので早めに郵便物の受け取り窓口を決めておく必要がある、という時間差に注意してください。なおPINは発行から4か月以内に入力しないと広告掲載が停止されます。
自治体や大企業の場合、親展便の宛先を誰が受け取るか/組織名義のAdSense口座を誰が管理するかで躓きがちです。承認前から、経理・法務・広報の連携窓口を決めておくとスムーズです。
5-4. 表示される広告は「カテゴリ単位でブロック」できる(ブランドセーフティ)
「収益化はしたいが、自治体公式チャンネルにギャンブルや政治系の広告が出ると困る」——これは組織の意思決定者が必ず気にする論点です。
YouTubeヘルプ「YouTube チャンネルや動画に表示される広告をブロックする」によると、YouTube Studio内で広告のブロックコントロールが3種類提供されています。
- 特定URLのブロック(最大500件):競合他社など、特定の広告主URLを名指しでブロック
- 一般カテゴリのブロック(最大200件):アパレル・銃・乗り物などのカテゴリ単位
- デリケートなカテゴリのブロック:出会い系・宗教・政治などの慎重に扱うべきトピック。ギャンブルとアルコールは初期設定でブロック済み
注意点として「ブロックのコントロールは、動画再生ページで配信される広告にのみ適用」とされており、フィード内や検索結果に出る広告には適用されません。それでも、組織として最低限のコントロールを持てる、という事実は、「収益化=表示される広告は完全にYouTube任せ」という不安を解消する材料になります。
組織内で導入を提案するときは、**「広告は事前にカテゴリ単位でブロックでき、組織のイメージに合わないものは制限可能」**と説明できると、決裁が通りやすくなります。
6. 自治体・企業チャンネルにとっての「1,000人」の意味
冒頭の話に戻ります。弊社が広報戦略アドバイザーとして関わる関西の自治体公式チャンネルが、先日、登録者1,000人に到達しました。
自治体や企業の公式チャンネルは、広告収益が目的ではないことがほとんどです。市民・顧客に情報を届ける、まち/事業のファンを育てる、関係人口を増やす、といった目的が先にあって、収益化は副次的にしか論じられません。実際、自治体が広告枠を売って収益を上げることへの是非は、自治体ごとに判断が分かれるところです。
それでも、「1,000人+4,000時間」というしきい値を超える、ということには別の意味があります。
- 動画が偶発的にではなく、繰り返し視聴されていること
- 登録というアクション(=自分のYouTubeアカウントに紐づけてフォローする)を1,000人が起こしている、つまり「単なる通り過ぎ」を超えた関心がついている
- これだけの分母が育つと、その後の動画はチャンネル登録者へのレコメンド経由でも視聴されるようになる(=雪だるま式の動き出しの起点)
つまり、「収益化条件をクリアできるチャンネル状態にある」ことそのものが、広報のKPIとしての到達度を客観的に示す指標になります。実際に収益化のスイッチを入れるかどうかは、別の意思決定で構いません。
7. まとめ
YouTubeの「広告」と「収益化」のしくみは、整理するとシンプルです。
- YouTubeが動画に広告を出す権利は、利用規約により最初から付与されている(YPP外でも広告が出る)
- クリエイター・運営者が広告収益を受け取る権利は、YPPに承認された後に発生する
- BGMや素材が他者のContent IDに該当していれば、収益は著作権者に流れる
- YPPには2段階:500人+3本/90日+3,000時間(ファン支援機能)/1,000人+4,000時間(広告収益含む全機能)
- 「4,000時間」にはShortsフィード視聴・非公開/限定公開動画は含まれず、12か月のローリングウィンドウで集計される
- 数字を満たしても**「再利用」「量産型」コンテンツ審査**で落ちることがある
- 承認後も米国税務情報の提出と**AdSenseのPIN住所確認(¥1,000で郵送/¥8,000で振込)**が必要
- AdSenseのアカウント種別(個人/ビジネス)は変更不可——組織なら必ず「ビジネス」
- 表示される広告はカテゴリ単位でブロック可能(ブランドセーフティ)
- 6か月以上アクティビティがないと収益化は停止される
自治体・企業チャンネルでも、クリエイター個人のチャンネルでも、「広告で稼ぐかどうか」とは別に、1,000人/4,000時間という到達点には意味があります。継続的に「届いている」ことの定量的な証だからです。
弊社ではYouTubeチャンネル運営代行・地方創生領域の自治体連携・企業のYouTuberタイアップなど、目的に合わせたYouTube活用のご相談を受け付けています。
関連記事:
出典(一次情報)
- YouTubeヘルプ「YouTubeパートナープログラムの参加条件」
- YouTubeヘルプ「拡大版YouTubeパートナープログラムの概要」(早期アクセス:500人条件)
- YouTubeヘルプ「YouTube チャンネル収益化ポリシー」(再利用・量産型コンテンツの定義)
- YouTubeヘルプ「Content ID の仕組み」
- YouTubeヘルプ「YouTube チャンネルや動画に表示される広告をブロックする」(広告のブロックコントロール)
- YouTubeヘルプ「米国税務情報を Google に提出する」(W-8BEN・最大24%源泉徴収)
- Google AdSenseヘルプ「お支払い基準額(と認証の基準額)」(認証¥1,000 / 支払い¥8,000)
- Google AdSenseヘルプ「住所確認(PIN)の概要」(郵送期間3週間・入力期限4か月)
- Google AdSenseヘルプ「アカウントの種類を確認する」(個人/ビジネスの種別は変更不可)
- YouTube公式ブログ「Updates to YouTube's Terms of Service」(2020年11月18日 / 非YPPチャンネルへの広告掲載の方針)
- YouTube Terms of Service(Right to Monetize 条項)




